story あの会社「ならでは」のストーリー

地域に無くてはならない、インフラになる。

― ―地域密着の観点で、違いはありますか。

土屋社長:実験店なんですが、今年群馬県前橋市に「くみまちモール」というショッピングセンターをつくりました。カインズとベイシア、他に何社かが出ているんですが、「よくあるショッピングセンターをつくるのはやめよう」と。全国どこに出ても同じようなテナント揃いで、顔が変わらないモールが多い。そういうモールをつくりたくなかったんです。「ならでは」のショッピングセンターにつながるコンセプトをつくりたいと思い、地域と密着したショッピングセンターにするために「くみまち=組み+街」というコンセプトにしたんです。

くみまち

僕たちの一つは食品ですから、地域でつくったものを売る場所を設けて、農家の方が持ち込めるようにしています。またカインズは農業資材の販売もしていますから、農家の方にはこっちのものを買ってもらうというような循環を考えようと。そして、パン屋さんにはドッグランを併設して、パンを食べてコーヒーを飲みながら自分の愛犬をドッグランで遊ばせるとか。商業者同士も組んで、商業者とお客さんも組んで、もしくは地域の行政と組んで、というようなことができたらいいなと思ったんですね。

まだこれは実験としてはじめたばかりですが、「くみまち」という言葉がもっと成熟してくれば、カインズが出なくても「くみまち」でいいんじゃないかと。一つの概念として「くみまちというのは地域密着のショッピングモールの名称なんだ」というぐらいのものにしていきたいなと思っています。

ここ自体がそんなに大商圏のモールでもないし、大都会でもない。でも、田舎なんだけども無くてはならないようなインフラになりたいんです。リラックスする場所もあるし、生活を楽しむ場所もあるし、参加できるコミュニティもある。お客さん同士が組む場所があるところにしていきたいと思います。

当社の出店の方法は「この場所がいいんじゃないか」と思って2年や3年、長いと10年かけてやっと出店できるかどうかなんですね。その土地や多くの地主さんにアプローチをして店をつくるというのがセオリーで、従来通りに出るという手法もありなんですが「くみまちというコンセプトがうちの村にも欲しいよね」という風に思ってもらえるような、向こうから誘致を受けるような存在であるべきだという思いもあります。そういう存在のものをつくっていくべきだろうと。

今地域では高齢化が進んでいて、いろんなものをセットアップするのもすごく大変だと思うんですよね。カインズで言えば「スマイルサービス」というものがあって、お宅に伺って電球一個から変えることを承りますというのは、便利なサービスじゃないかなと思っているんです。そういったことも含めてカインズらしく、“Kindness”センターとしての役割を果たしたいと思っています。

ホームセンターの概念を、超えていく。

― ―「カインズホーム」から「カインズ」に変えられた意図を教えていただけますか。

土屋社長:お客さんからも「カインズ」と呼ばれていましたが、ホームセンターという産業の中に、必ずしも居続けなくてもいいんじゃないかという想いがありました。そこからちょっと離れて「カインズはカインズである」という風な存在になりたいという想いがあって、カインズホームからカインズに変えたんです。

― ―確かに概念が広がりますね。以前は「あれが無くなったから行く」場所だったのが、習慣としてお店に行って「何かいいものは無いかな」と探すような流れもあるように感じます。

土屋社長:習慣のように買うところの特にナショナルブランド商品については、サブスクリプションモデルが出てくると厳しい部分はあると思うんです。例えばシェービングについて単品での改善もいいけれど、「朝の時間や夜寝る前の洗面台にいる時間を快適に過ごせるような商品やサービスをつくるのがカインズらしいんじゃないの」という議論がありました。バスタイムもそうかもしれないし、匂い、音楽、色、照明と考えると、いろいろな風に幅が取れると思うんですね。通常ネット販売だと単品になりますが、暮らしの中の空間をどう改善するかというのはネット販売だとなかなか難しいのかなと。これも“Kindness”につながるんですが、「暮らしの改善や提案をできる会社になりたいね」という話をしています。

カインズの各店舗でDIYのワークショップを実施している。

新業態店舗「Style Factory」の2号店が名古屋にオープンしました。「スタイルを生み出す工場」という意味合いで、カインズのイメージとはガラリと違ってオリジナルのものが中心になっています。4つのテーマがあり、「RAKUKAJI(楽カジ)」、「WELLNESS(ウェルネス)」、「DIY STYLE」、「HOME DESIGN」です。「スタイルを生み出す工場」の役割としては、どんどんスタイルを生み出していければいいと思っています。一方で、「RAKUKAJI(楽カジ)」の中でもっと楽カジになるような方法が生まれる方がいいのか。洗面台の中の空間を良くするというのは必ずしも家事じゃないから、また違うカテゴリーができたり、細分化したり、新しいものができてきたり、どんどん生まれてきたら面白いと思いませんか?

“Kindness”を届けることだけに、投資する。

土屋社長:僕らがやっていることは月に行くようなことではないんですけれども、日常のささいなことを改善することが大きな差につながっていく。そういうところが、イノベーションと言っていいかわかりませんけれども、それをつくり続けるような仕組みにしていくことがすごく大事だと思っています。

“Kindness”を届ける会社でありたいと思っているわけですが、僕が親切心をもって対応していたとしても、相手が「この人親切」と思ってくれるかどうかわからないですよね。そのハードルは時代時代によって変わってくるものだと思うんです。20年前と比べても今はネットの普及やスマホでなんでも買えるという状況で、調べようと思ったらその場で調べられる。店員が書いてあるスペックを全部記憶するのは難しいので、そこの部分ではテクノロジーを使いながら。

テクノロジーは、「親切心を届けることをブラッシュアップするためのIT」にしていきたい。例えばあるサイトを開くとパーソナライズされた情報が出てくる。店に今まで通り感じのいい人がいくらいても、「誰々さんですね」というのは人間だとわからない。そこのところをどういう風にITのフォローが入って接客できるような体制にするかというのが課題です。

新しいテクノロジーを入れて、今のリアルの店をより高度化する。店だけではなくECも含めてですが、より高度化したサービスをつくっていきたいと思っています。突飛なことではなくて、相手が親切と思ってもらえるようなことについてだけ投資をしていきたいですね。

価値創造プロセス

価値創造プロセス

【編集後記】

カインズには毎週のように行きます。毎日の暮らしの中で使うちょっとしたものを調達する。クリエイティブ心が刺激されるDIYの道具や資材。あーでもない、こーでもないと家族とアイデアを言いあう。CAFE BRICCOであったかいコーヒーを買って、飲みながら庭に植える花を選ぶ。カインズでは、「買い物」と同時に「クリエイティブな体験」をしているように思います。だれでも日常の暮らしをクリエイティブにできる。ちょっとしたことを変えることが、世界を変えることにつながる。そう土屋社長からお話を伺って、「まさに!」と実感しました。今週末もまた行こうと思います。橋本和人

カインズ「ならでは」のストーリーは今回で終わります。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。