story あの会社「ならでは」のストーリー

DIYを、拡大解釈する。

― ―町田多摩境店などを戦略的に変えられていますが、その意図を教えていただけますか。

土屋社長:SPAという流れともう一方で「DIYを強化しよう」という流れがあります。少しブームではあるんですが、「DIYの文化をもっと広めよう」と。アメリカのホームセンターはある時期ベビーブーマーのDIYをやる人たちが増えて、その人たちが本格的な家をつくっちゃうぐらいのDIYがあって、この産業がすごく伸びたんです。一方で、日本ではホームセンターが入ってきてから今まで DIYブームというのはなかったと思っているんです。ところが最近になって、ミレニアル世代から火がついたDIYの潮流が来ているような気がしています。

すごく便利な世の中になって、本当にネットで色んなものが買えるけども、自分らしいかと言うとそうじゃないと。ものをある意味大事にして、それをつくり変えてものをつくろうとか、自分らしく模様替えをしようというのは、日本の考えの中には今まであまりなかったように思います。あってもすごく高かったんですね。それをもっと一般の人たちでもできるように「DIYの敷居を下げて、一般の人たちから楽しめるようにしよう」という意識が当社の最近の店づくりの発想になっています。その流れからカフェや「Live Green」と言うグリーン売り場なども、「空間の中に緑があるのと無いのとで心地良さが全然違うよね」ということを、DIY感覚で楽しむ仕様にしています。

拡大解釈したDIYで、可能性が広がっていく。
DIYの拡大解釈で、アウトドアのスタイルも提案している。

例えばアウトドアも今ブームになっていますが、以前は場所がセットされているところで肉を焼いて食べるのがアウトドア。一方で今は、「チップにこだわると燻製の味が違うという変化も楽しみましょうよ」というものもある。どちらもアウトドアの分類なんだけれども、「これもDIY でいいじゃん」と。そういう風に考えると、大きい意味でDIYでくくれると思うんですね。これを「DIYの拡大解釈」と呼んでいるんですが、「拡大解釈されたDIYを楽しめる店にしたい」というのがあります。「週末どうやって楽しもうか?」ということをリラックスして考えてもらいたい。その場所として「CAFE BRICCO」というコーヒーとマフィンの店をつくって、リラックスしながらそういうことを考える場所という位置づけにしたいと思っています。

― ―DIYの拡大解釈でカテゴリーの境界線が曖昧になってきそうですね。

土屋社長:そうですね。僕が子どもの頃と比べるとファッション寄りのイメージになっていると思います。店でもそういう敷居を下げた商品を開発して販売をしていますね。一方でSNSがすごく普及していますから、動画をつくって動画でDIYのかっこよさをアピールしたい、ということで300本ほど動画があります。それを使って、DIYを楽しんでもらいたいと考えています。

この分野についてはいろいろな手を打っていまして、まず店を変える。カフェをつくる。デジタルでのアプローチ。フィジカルな部分で言うと、電動工具はすごく敷居が高いので、それを教える場所をつくりワークショップをやる。やり方を覚えちゃえば、あとは自分でつくれると思うんですね。最初のやり方がわからないから敷居が高いわけで、そこの部分をフィジカルにワークショップでお伝えしようというところをつくっています。

カインズの各店舗でDIYのワークショップを実施している。
カインズの各店舗でDIYのワークショップを実施している。

― ―DIYの拡大解釈によって、来店されるお客さんの層に変化は見られますか。

土屋社長:ホームセンター全体の平均で言うと男性が6割から7割と男性の比率が高いんですが、カインズの場合は男女比で言うと女性が多いです。DIYへの興味は女性の方が高いので、アプローチがしやすくなっていますね。新店のように今までの概念がない店であればあるほど、女性の比率がすごく高いです。客層は高齢なイメージがあると思うのですが、流れに乗って若年層の方にも多く来ていただいていると思います。

― ―一方でプロの方々も活用されている「資材館」も増えていくのでしょうか。

土屋社長:「資材館」は一般向けのお店のようにワッと客数が増えるというのはなくて、少しずつ増えていく業態だという実感を持っています。朝早くオープンさせていますが、それは工務店の人や多能工の人が「現場に行く前に寄って足りないものを買って行ける店」という位置づけだからなんですね。ターゲットも違いますし、店のあり方も違います。今はそれほど差を感じないと思いますが、今後もっともっと差が出てくる業態にしなければと考えています。

最初の町田多摩境店も一つの館でやっていましたから、プロの人、アマチュアの人っていう風に売り場もわけてなかったんですね。私たちの感覚では違和感はなかったんですが、お客さん的には違和感があったみたいで。一般の人も普通に買っている広い場所で、プロの人たちは「すぐ行って早く買いたい」というように、ニーズが一般の人と違うんですね。それを従来は一つの館でやっていたわけなんですが、ニーズが違うんだとわかってからは、両方で差をつけた実験をして変えていこうと思っています。

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土屋裕雅 (つちや ひろまさ)

株式会社カインズ 代表取締役社長