story あの会社「ならでは」のストーリー

フーディソン山本CEO インタビュー Vol.4

WEBで鮮魚仕入れできる飲食店専用のサービス「魚ポチ」、こだわりの魚を情報とセットで提供する鮮魚小売店「sakanabacca」を展開する株式会社フーディソン。「世界の食をもっと楽しく」をビジョンに掲げ、ITを導入して水産業界に今までの延長線上にない変化を起こそうとする同社。その原点には、「水産業界を変えることで世の中をハッピーにする。社会に貢献し続ける会社をつくる」という山本徹社長の志があった。水産業界の今、これからについて、フーディソンならではの話をお聞きした。
全5回でお届けします。

目指したのは、「魚屋っぽくない店」。

― ―水産業、魚屋への固定観念、イメージを変えるようなブランディングを実践されています。どういったところにこだわって、取り組んでいらっしゃいますか。

山本CEO:水産業はイメージが身近ではないですよね。水産の商売は漁師も市場も小売りも日々の相場で勝負していて、魚屋さんはとにかく忙しい。現金を回収したり魚をおろしたり、商売をその間にしなくてはいけない。いきなり「二枚と三枚、どっちにする」と聞かれるような売り方は、常連さんにとっては良かったけれど、ちょっと食べてみようかなという人たちにとっては身近ではないですよね。マーケットを広げられる可能性に対して、広がらないような環境があった。せっかくスーパーとは違う店主が選んだイキが良い魚が並んでいても、楽しみが広がっていかないんじゃないかと。

あとは、ハエが飛んでいる、臭いがきつい、足元がびちょびちょで汚れてしまう、運んでいたら水が漏れてきたとか、あらゆる側面で他と比べてもイケていなかった。そういう顧客体験として良くないことを変える。魚屋のあり方を変えるような店をつくらなきゃいけないと思いました。「魚屋っぽくない」というのが重要で、創業から二期目に社員デザイナーを採用して、店舗・外観、すべてのデザインを任せています。「魚屋っぽくない」という目的に対して、まずハードからやりました。そこにソフトとして魚を並べて、説明をするためにこういう人を採用しないといけないという流れです。

デザインの力で、最悪のイメージを変えたかった。
商品のデザインも社内のデザイナーに一任し、見た目にもこだわっている。

今は軌道に乗っていますが、当時は丸魚だけワーッと並べる店をつくりました。すべて産直で、マニアックな魚も揃えて、レア度やおいしさ度がわかるようにして。こういうのがあったらおもしろいよねということをやっていましたが、それは先に行き過ぎていました。「干物ないの」とか「こんな魚無いの」とか、「こういう魚屋さんがあって良かったね」と思っていただいても全然売れませんでした。

おもしろくても不便ではダメなんだと、チューニングしていきましたね。丸魚も必要だし、定番の魚もなければいけない。でもそればかりだと面白みもないので、季節をどう取り込んでいくのか。おいしいと思うものであれば、少量でも置きたい。そういったことを試行錯誤していく中で、一定の支持が得られるようになりましたね。とにかく、イメージを変えたかったですね。魚は汚くて臭いという最悪のイメージを。そのためにデザインの力を活用しました。デザインのことはデザイナーに一任していて、私がこういうのをやりたいと言うと、いい感じにカタチにしてくれます。

― ―デザインの力は、商品企画にも活かされているのでしょうか。

山本CEO:魚の陳列やMDについては店長に一任していて、常温品に関してはOEMで自社製品に変えていっています。ブランドを掛け算して、パッケージも含めて楽しんでもらえるようにつくり変えていくというところに、デザインの力を使っています。

すでに世の中にある場所を、どうシェアできるか。

― ―新たな挑戦をされている中にJRとの取り組みがありますが、どういった経緯ではじまったものなのでしょうか。

山本CEO:常温品のように魚を個宅配送することはかなり難しいと思っています。それであればどこかのターミナルで魚を受け取ってもらう。それが帰りがけに駅で受け取れたら最高じゃないかというのが、JRさんと取り組んでいることです。体験をより良くしていくという切り口では一貫しています。おいしい魚とあわせて情報も得て、「あの産地のこういうエサを食べたアジなのね」と家で食べながら思うことを、会社帰りに持ち帰りながらできたらより良い体験ではないかなと思っています。我々は「sakana bacca」という小売店を世の中に広げ、売り場を増やしていくことをしない限りは、「いいよね」と言われても4店舗しかないんです。そこで一つの切り口として駅があるかもしれない。

もう一つはすでに世の中にある売り場をどう一緒にシェアしていけるか、というのを考えているところです。例えば、スーパーの魚コーナーの一部に我々がブランディングした魚並んでいてもいいですよね。既にスーパーでは変化が起きていて、東急ストアだと東急ストアが並べている野菜と農業総合研究所という会社が並べている産直野菜コーナーが両立している。ニーズが多様化する中で、すみ分けをする方法はあると思っています。魚に関しても「普段食べていないのどぐろが欲しい」という人がスーパーの売り場で受け取れるようになると我々も設備投資がいらないですし、スーパーにとっても集客の目玉になるかもしれない。こういう組み方ができるとお客さんの今の導線の中での解決にもなり得ますよね。

調達の中に「sakana bacca」のコンセプトを入れさせていただいて、「今の季節でおいしい魚を調達してきました」という出し方にしたり。ベンチャー的には店舗を広げていくために、設備投資がいくつも重なって大変です。仮に私たちのブランドを認知していただいているとすると、人のふんどしを借りて勝負するのは、win-winになり得るのかなと思います。そういう連携をしていきたいですし、もっと消費者を獲得するために、私たちはパートナーになりますというのを伝えていきたいです。

― ―それは、ブランディングがしっかりできているからこそ、できることですよね。

山本CEO:まさにおっしゃる通りだと思います。ブランディングが無いと「うちに御社の商品を置く必要はない」となってしまいます。魚は誰かがつくるものではなく、海にいるのを獲ってくるわけじゃないですか。そこに本当に意味がないと成り立たないと思います。私たちが調達した魚が何らかの違いがあるから、例えば長崎県産で同じ沖で獲ってもその場でしっかり血を抜いて、温度管理はこうやって持って来ているから絶対おいしくて。「今日の19時に刺身で食べてください。それが一番おいしいんです」という提案ができる魚と、よくわからないけど安いから買ってきた魚だったら、おいしさMAXになるイノシン酸が最大になるところで食べたいわけじゃないですか。ピークのところで食べたい。「その魚は一昨日の何時に水揚げして血を抜いたから、科学的には今日の19時が最高なんです」と言われたら食べたくなるじゃないですか?

― ―もう、食べたくなってます。

山本CEO:夜になると特売で値下げになりますが、もしかしたらそのタイミングがおいしいかもしれないんですよ。スーパーの調達ではできないけれど、私たちだったらプレゼンテーションできる売り場がつくれるかもしれない。単に「sakana bacca」のシールを貼るだけでは何ともならないので、「本当に違いが何なんだろう」というところまでつくれたらおもしろいですよね。「むしろ特売しない」みたいな。

― ―既存の設備をうまく使っていく、という小気味良さがありますね。

山本CEO:全部自前でなくていいんですよね。良くしていくというのであれば、お互いにやった方がいいと思いますし、私たちが役に立てるところは何なのかと。

― ―どうしても対立という考え方になりがちですが、共創していくという考え方になるんですね。

山本CEO:ベンチャー的には、世の中を変えていくということにコミットするのであれば、一緒にやった方がいいですよね。「自分でやりたい」というのではなく。変えられるかどうかなので。


山本 徹

山本 徹 (やまもと とおる)
株式会社フーディソン 代表取締役CEO

北海道大学工学部卒業。不動産デベロッパーに入社。株式会社エス・エム・エスに創業メンバーとして参画し取締役に就任。ゼロからIPO後の成長フェーズまで人材事業のマネジメント、新規事業開発に携わる。2013年フーディソン創業、代表取締役CEOに就任。