interview 有識者インタビュー

名和高司 Vol.05

中途半端なミートゥーをやっていては、
生き残れない。

――中堅・中小企業では人員を割けない状況・課題もあると思います。そうした中でデジタル化への対応、クリエイティビティを発揮しないといけません。どんなことを中堅・中小企業に期待しますか?

名和先生:デジタル化されるとほとんどのものがコモデティになってしまう。みんな同じになってしまうんです。 むしろ大企業の方が大変で、多くの社員を抱えてやっていることが全部AIやIoT、ロボットでできてしまうので、人がいらなくなってくる。そうすると大きな規模が必要ではなくなってくる。ユニークなところしか残らない状況になるはずです。オープンなプラットフォームがあれば、それを使えばいい。例えばAmazonのAWSを使えば、自分のところにIT 部門はいらないわけです。プロプライエタリに自分の企業ならではという城を築いて、外と分離して活動するということ自体ナンセンスになってきます。AI、IoTの台頭は、大企業の方が怖いはず。大企業はどんどん解体していく。中堅・中小企業が持っている「ならでは」のものを、大企業も持たなくてはいけないですよね。中堅・中小企業では、一芸に秀でたところの方が残ります。

古いやり方ですべてを自前でやっていたらコスト高になり、時代遅れになるので、自分たちしかできないものに特化する。中堅・中小企業は非生産的な部門を持っていませんし、どんどんアウトソーシングをする。自分にしかできないことだけをやる。このように、どんどん純化していきます。「自分たちしかできないことは何か?」と問い直した方がいいと思います。デジタルなものは全部プラットフォームの中に、アルゴリズムで入っていくので残らなくなります。匠の世界とか、五感で何かをする、もしかしたら第六感や直観などが勝負となる。そういう世界だけが残っていく。中堅・中小企業、歴史の長いところほど「ならでは」の特性を純化させれば生き残りがいくらでもできる。何にでも手を出すのではなく、自分の光るものを持つことのほうがずっと大事。中途半端なミートゥーをやっていては、残らなくなってしまう。

名和高司

アナログを、匠の技を、
いかに伝承するか。

名和先生: 日本の技術の最先端の1つが、金型です。匠がすごく大事な領域です。日本の最後の力の拠り所になるので、アナログの匠の世界をいかに伝承していくかが大事。デンソーの有馬社長がよく言っているんですが、自動車部品の技術がどんどんデジタル化する中で、ロボットとかIoTで人を置き換えではなく、それらを使って人がどこまで匠を極めるかが勝負となる。 IoTやロボットには簡単に置き換えられない匠の技をもった中堅・中小企業にこそ、生き残りのチャンスがあるのです。ただ「ならでは」や一芸というのが薄くなった企業は、気をつけた方がいいと思いますね。

――匠の技が継承されていかない課題は残っていますよね。いま日本で盛り上がりを見せている業界は、ITを駆使して流通を変えた人たちだと思います。そういう企業はいずれ淘汰されるのでしょうか?

名和先生:そうですね、淘汰されると思います。おそらく途中には、デジタルディスラプターと言われる今までの業界を破壊する人たちが現れるんですけれども、結局それも一時的なものでしかない。ブロックチェーンが入ってくるとアルゴリズムが分散されるので、アマゾンやアリババ、Googleみたいに真ん中に入っているプラットフォームはいなくなってしまう。全部が分散されて、ブロックチェーンの集合になるので中堅・中小企業しか残らない 。あとは全部、技術のプラットフォームになっていく。一時的に業界を破壊する人が出てくることも必要ですが、最終的には全部インフラになってしまう。

インターネットはただ繋ぐだけだけれどもブロックチェーンによってあらゆるモノがロジックとともに繋がっていって、真ん中のハブが誰もいない世界ができあがる。そうなると、大企業そのものの意味がなくなる。もっと言うと企業自体の意味がなくなる。『DAO:Decentralized Autonomous Organization(分散自律組織)』という言葉が最近出てきているんですけれども、組織がバラバラに解体されてしまう。当たり前なことをやっているところは残らない。「ならでは」があるところしか残らない。自分が得意なことだけやっていれば、あとは全部繋がっていくんです。

――例えば、流通は大きいものが勝ちますが、それがなくなるということですか?

名和先生:なくなります。大きなものが全部インフラになりますから。これまでは大企業が中堅・中小企業を自分のグループに入れることによって流通の支配力を強めてきましたが、これからはそれ自体が価値を生まなくなってどんどんインフラになる。お金の貸し借りを仲介する銀行も、なくなってしまいます。IoTの次にはBoT(ブロックチェーン・オブ・シングズ)の時代が来ると言われています。そうなると、中堅・中小企業の天下だと思います。「これからは、あなたたちの世界ですよ」そう言いたいですね。

名和先生へのインタビューは今回で終わります。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。

名和高司

名和高司(なわたかし)

一橋大学大学院 経営管理研究科 国際企業戦略専攻
客員教授 名和高司

東京大学法学部卒、ハーバード・ビジネス・スクール修士。三菱商事の機械(東京、ニューヨーク)に約10年間勤務。 2010年まで、マッキンゼーのディレクターとして約20年間、コンサルティングに従事。自動車・製造業分野におけるアジア地域ヘッド、ハイテク・通信分野における日本支社ヘッドを歴任。『高業績メーカーはサービスを売る』(2001、ダイヤモンド社、共著)、『戦略の進化』(2003、ダイヤモンド社、共著)、『学習優位の経営』(2010、ダイヤモンド社)、『日本企業をグローバル勝者にする経営戦略の授業』(2012、PHP研究所)、『失われた20年の勝ち組企業100社の成功法則 「X」経営の時代』(2013、PHP研究所)、『CSV経営戦略』(2015、東洋経済新報社)、『成長企業法則~世界トップ100社にみる21世紀型経営のセオリー』(2016、ディスカバー・トェンティワン社)、『コンサルを超える問題解決と価値創造の全技法』(2018、ディスカバー・トェンティワン社)など著書・寄稿多数。

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